愛してしまったので離婚してください
どんどんと険しくなる雅の表情を見て、私はさらに不安になった。

「私から奥さんに言いましょうか?」
医師の言葉に雅はゆっくりと顔をあげて、首を横に振った。

「もう少し画像を見せてもらってもいいですか?」
「もちろん」
雅はデスクトップを操作しながら険しい表情のまま画面を食い入るように見ている。

繋がれていた手が離されて、急に空っぽになる。

少しして雅が私の方に視線を戻した。
「晶のお腹にある腫瘍の場所も、いったい何なのかもわかった。」
緊張して、呼吸することすら忘れそうになる。
「晶の右側の腹直筋内に2.3㎝程度の腫瘍がある。画像をみる限り、腹直筋内に収まっているところは所見でも予想していた通りだった。ここにあるの、わかるか?」
雅は画像を指さす。その指の先をみると言われてみれば何かがあるように見えた。
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