桜色の歌と君。
大事なことを言い忘れていたことに気が付いて、急いで言葉を付け足す。

「それにね、この曲は宮野くんが歌うことを思って作った曲だから。」

宮野くんの瞳が見開いた。

とても恥ずかしいことを言った気がして、思わず視線を逸らす。

「ありがとう。」

耳に届いた言葉は、喜びに溢れていて、私の心臓をくすぐるほどに甘かった。

「後夜祭で、二曲披露しない?」

そう言うと、宮野くんの目がさらに大きく開いていく。

「え、いいの?」

驚嘆の声を上げる宮野くんに、私は頷いて見せる。

「幸せな歌も、歌った方がいいんじゃないかなって。

聴いてくれる人たちに、切ない気持ちのまま聴き終わってほしくないの。

宮野くんの歌声は、誰かを幸せにするものだと思うから。」

「そんな風に言ってもらえるなんて、うれしいな。」

宮野くんは顔を綻ばせて、照れたように笑った。

うれしそうにしている宮野くんが可愛くて、愛おしくて、心が満たされる。

宮野くんを照らす太陽の光や、頭上に広がる青の深さまで目に焼き付けて一生覚えていたいと思った。

「そういえば、この曲はタイトル決まってるの?」

「春を結ぶ。はどうかな。」

「春を結ぶ。」

抱きしめるようにそっと反芻すると、宮野くんはとても満足そうに微笑んだ。

「この曲を歌えば、いつでも春に触れられるね。」

私が思っていたことと同じようなことを言ってくれて、喜びとときめきが胸を駆け上がっていく。

「そうだね。」

二人で笑みを交わし合う。

春の匂いが、そっと鼻をかすめた気がした。
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