桜色の歌と君。
期末試験が終わると、終業式までは午前授業だけになる。

日に日に暑さが増して、屋上へ行くことはなくなった。

私は図書委員の仕事のために火曜と木曜の放課後を図書室で過ごし、それ以外の曜日は宮野くんと小階段で話したり、千草ちゃんとファミレスに行ったりした。

ある日の放課後、いつまで経っても図書室に来ない宮野くんを心配して、昴さんが話しかけてきた。

「理由聞いても、本が嫌いだからとか適当な事ばっか言うんだよね。なんとなく、何がきっかけかはわかるんだけどさ。」

昴さんの表情に影が落ちて、心苦しくなる。

でも勝手に綾乃さんの話を持ち出すのは宮野くんに悪いので、話を濁すしかなかった。

「そのうち来ると思います。今は、そっとしておいてあげたほうがいいのかもしれません。」

「そうだね。」

昴さんの低い声が、静かな図書室に飲み込まれるように消えた。

しばらく口を閉ざしていた昴さんの顔に、穏やかな表情が浮かんだ。

とても優しい眼差しを向けられて、驚きで息が詰まる。

「ありがとう、花咲さん。遥人はああ見えてすごく繊細なんだ。側にいてやってね。」

その愛しさを込めたような表情と声は、宮野くんに向けられたものだと理解していたけれど、普段のクールな表情とのギャップも相まってとても魅力的に映って、心をすっと奪われてしまいそうになった。

「はい。」

胸がいっぱいで、そう一言返すのがやっとだった。

素敵な友情に触れることができて、その日の仕事はとても温かな気持ちで穏やかに進めることができた。
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