ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 律は思い切ってそれを手に取る。
 ジャキン。

「お母さーん、行ってくるねー」

 手際よく身支度を済ませた律は、玄関で靴を履きながらリビングの方に向けて声をかけた。

「いってらっしゃー……えっ」

 リビングの戸を開けて出てきた母が、驚いた声を上げる。
 それもそのはず、律が前髪を短く切り、伊達眼鏡を掛けていない姿だったからだ。

「変装、しなくていいの?」
「熱愛報道の誤解が解けたの。これからは自分らしく生きる。休みの日には美容院に行って、綺麗に整えてもらうつもりっ」

 母に向かってウインクしてみせる。

「そう、そう……やっと前に進めるのね。よかったわ」

 母は、目に涙を浮かべて嬉しそうに笑っていた。 
< 115 / 130 >

この作品をシェア

pagetop