ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
「ドラマの撮影とか言って、本当は彼女とのデートで忙しいだけだったりして」

 ――新條に彼女が? それが明るみに出れば、世間は私との熱愛報道を忘れるかもしれない! 人の噂も七十五日って言葉があるくらいだもんね。……あれからもう七十五日以上経ってるけど。

 律は一言一句聞き逃すまいと、聞き耳を立てた。

「はぁぁ?」

 男子は反論しかけた新條の肩に手を回し、続けた。 

「難攻不落のあっちゃんでも、南野ひかりちゃんには落ちるんだね。わかるよ、めちゃくちゃ可愛いもんな。なぁ、二人っきりのときはどうなんだよ~真面目で優等生なキャラはテレビだけなんだろ~~?」

 私のことかーい。もっと別の話題はないんかーい。と、心の中でツッコミを入れる律。

 可愛いと言われるのは嬉しいのだが、新條の彼女として話を進めないで欲しい。こんな最低な奴と一緒くたにされるなんて屈辱だ。

 律が新条と付き合うなんて、天地がひっくり返ってもありえないのだ。

「付き合ってねーから」
「あはは。照れ隠ししてる」
「あの熱愛報道はフェイクニュースだッ! 簡単に騙されてんじゃねぇッ!」

 新條がきちんと否定している。
 律にとって、信じ難い光景だった。
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