ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 大和田先生は嬉しそうにそののど飴を受け取った。

 ――新條って優しいところもあるんだ。

 新條と大和田先生の和やかなやり取りを見ていた律は、気持ちがほっこりとしてきた。

 何か企んでいるなんて、考えすぎかもしれない。新條がそこまで計算高いとは思えなかった。

 それに、もし新條が律の正体を知っているなら、すぐにそれを言ってこないのは絶対におかしい。つまり新條は律の正体に全く気付いていないということになる。 

 ――新條は、本当は良い奴なのかな? 
 ――いや、良い奴なわけがない。本当に良い奴だったら、熱愛報道で黙秘なんてしない。
 ――でも、こうして先生にも親切にしてるってことは……。

 律の心は揺れに揺れ、新條の本性を暴きたいとさえ思った。

 連日新條が差し入れをくれるおかげで、律はタダでお昼ご飯が食べられるという何ともありがたいことになる。
 ある朝、制服のスカートのホックを止める場所が一つ内側にずれた。体重計に乗ると二キロ増えていて、着実に元の容姿に近づいていることに気付く。

 ヤバイ、このペースだとあっという間に元の体重に戻ってしまうかも……と、律は心配になった。早く振り付けを終わらせてコンビ解散するべきだ。

 でも美味しいものには敵わず……、また中庭にやってきてしまう。これは新條の本性を暴くためだ、と自分に言い訳ばかりしていた。
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