2章・めざせ転移門~異世界令嬢は神隠しに会う。

古巣と新居が交わるセントミラージュ

*.゜※『ヒュ~~~、.゜・※
ド ドォーーーーン、』..*※^!、、、パチパチ、、、』.※*

タイミングを測ったかに、
一発のピロテクニマが上がる
音が、
会議室の外から
聞こえた。

此の調整世界で上がる花火は、

海神ワーフエリベスが誕生を祝う
前夜祭の始まりの合図。
明日の夜には、
無数のピロテクニマが打ち上がる。


其して夕焼けの蜃気楼、
『セント・ミラージュ』
恋人達の夕暮れが終わった事をも
意味する。

「今年もピロテクニマが、
華々しく上がったか。」

「下ではピロテクニマを見る巡礼
者に、酒を用意している。
我らも早々に議題を片付けて、
宴としまいか。良いだろう?」

各ギルドの長達が、
マイケルの提案した資料を手に、
賛成を意味する札を
次々と上げていく。

会議の前にルークが言った事を、

(今日ほど、絶好のタイミングは
ないって、こういう事なんだ。)

マイケルは長達の様子から
思い出した。

『セントミラージュ』を
夕焼けの光に包まれて見た
恋人達が、
其のまま城下で上げられる花火、
『ピロテクニマ』を楽んだ後は、
夜通し踊る。

酒盛りをする島民に合わせて、
普段は城下で商いをする
商人達でさえ海辺のギルドまで
屋台を出しに来るのだ。

(今頃 タヌーとナジールは、
ピロテクニマを上げるのに
きっと大忙しなんだろうな。)

会議の議長をするラジが、
全員一致で札を上げる
長の名を
議事録に記していく。

「では、マイケルの案は本格的に
進める方向で。今回の藩島
全域に配電水を行う計画と同時
進行で稼働費用の徴収を、魔充
石による魔力でも払えるように
して参るで、よろしいな。」

「「「異議なし!!」」」

ラジの問いに、長達の応えと拍手が成される。
満場一致の拍手を合図に、
今度はルークが挙手した。

「では、ゆくゆくは其の魔充石で
集めた魔力を、結界魔力に応用す
る計画に移行と思って良いか?」

「現段階では概ね其の方向で。
よろしいな、長殿達よ。」

ラジがルークを見て、
ゆっくりと長達に賛成を促す。

「わしらは問題はない。但し神殿
側は如何様か。結界に関しては、
わしらの範疇を越えるでの。」

だだ1人。
グランド・エリベスが
地区に聳えるツッチーナシュウの
長だけは苦言を呈した。

『確かに。』
『神殿と縁があるのはツッチーナ
シュウだけよな、、』

長達がざわめく中、マイケルも
思案する。

「神殿、、」

これまでに
藩島の聖地を回ってきた
マイケルだが、
何処も原始信仰といった風情の
土着パワースポット。

(きちんと整備された宗教施設は
見た事がなかったな。やたら
エリベス像があるんだから、
普通は神殿が統括してるか。)

ヤオと移住をした城下町では、
神殿らしき物を
まだマイケルは見た事が
なかったのだ。

「まずは、ギルド連盟で提案書を
藩島ユニオンに出すとする。」

「では、配電水の主力に使う
動力について、魔充石では
無く、魔獣石を使用する件で、」

以後の会議は
当初の予定通り進められ、

海岸地域から
島の中心に向かって、
ライフラインを整備する準備が
話し合われると、
無事に散会となった。

マイケルの案は、
後日に整備現地を視察してから
詰める事になる。

「ルーク!ギルドに商会から屋台
が来てるって、ラジが言ってた
じゃない?この後、どう?」

会議が終わると
ラジやレサをはじめ、
長達が友好を深めるとの
理由で、
ギルドの階下へと楽しげに
連れだって降りて行く。

マイケルは意を決して
階段を降りる
ルークを誘ってみたが、

「悪い。この後、また顔を出す
所がある。せっかくだが、、
だが、良ければヤオと一緒に
城下の家まで馬で送るぞ。
町にも屋台は出ているだろう。」

ルークは申し訳けなさそうに
茶色の髪を掻き上げて、
この後にも予定があると
謝ってきた。

「そっか、ルーク忙しいね。
せっかくのセントミラージュ
の日だけど、、そっか。」

最近覚えた、異世界での恋心。

元世界に許嫁がいるとはいえ、
政略婚約のマイケルには、
ドライな感覚でしか
恋を、知らない。

今回も同じ感覚だと
思っていたマイケルは、

セントミラージュに、
ルークの相手が居ないと知って
浮かれていた自分が
存外気落ちした事に

気が付いた。

「じゃあ、ヤオを探して
こようかな。マモと一緒だと
思うんだけど。ヤオー!!」

(もしかして、此の後の予定
って恋人かもしれないか。)

それでも城下町まで歩いて来た
マイケル達を送ってくれる
と申し出てくれた事に、
マイケルは
気を取り直してヤオを探す。

「あれ?ヤオーー!」

降りたギルドのホールは、
何時もの冒険者や巡礼者の列に
加えて、
セントミラージュ後の
ピロテクニマ観客や、
屋台で
いつもよりもごった返していた。

「マイケーーール!!おーい。」

そんな
祭の賑わいを別けて、
マイケルを呼ぶ人影が近付く。

「え、ナジール?どうしたの?
城下でピロテクニマ上げてる
んじゃなかったの?!」

城下町で、魔具を作る魔具工房の
ナジールだ。

「父さんの商会で今日は、海辺の
ギルドに屋台営業に変更だ。
隣の商会にピロテクニマは譲っ
たよ。さあ、こっち、こっち。」

初めて会った時から
親しげな雰囲気のナジールが、
何時もの様に
マイケルの手を引こうとして、
後ろに立つルークに
気が付くと
無言で視線を投げた。

「マイケル、こちらは?」

ルークが先にマイケルの肩を
掴んで聞いてくる。

「あ、ルーク、城下で魔具工房を
しているナジール。タヌー商会
の息子なんだけど初めてよね。」

「あれ?もしかしてギルドの人
ですか?初めまして、工房
をしてますナジールといいま
す。冒険者さんですよね。」

商人の息子らしく人懐っこい笑顔を見せて、
ナジールがルークを覗きこんだ。

「ルークだ。確かマイケルは、
最近城下に住まいを移した
ばかりだろ。随分気安いな。」

ルークはナジールを見据えると、
マイケルに重ねてナジールとの
仲を問い掛ける。

「ああ、マイケルは、同じ
敷地に住んでますからね。
もう家族みたいなもんで。」

「ちょっと、変な言い方やめて
よね。タヌーが大家なのっ!
商会の上に間借りしてるの!」

何の事はなく、マイケルが住まいを探していた時に、
ギルドの副長レサが紹介して
くれたのがタヌーの家だった。

「はは!ま、そーゆーことで。」

「へぇ、なるほど。」

ルークとナジールが、
お互いを値踏みするかの視線を
交わしている間、
更に割って入ってきた男が
マイケルを呼んだ。

「よー、マイケル。終わったか。
お前さんのアトゥンのステーキ
取っておいたぞ!すぐに売れ切
れたんじゃ!感謝しろー。」

(マグロのステーキ!でも、
折角ルークが送ってくれる
から、テイクアウトして、)

「あ、あのタヌー。それ、
袋に入れてくれ、」

マイケルがタヌーに急いで
持ち帰りを交渉しようとした時、

「マイケル、どうやら送りは
不要だったみたいだな。また」

ルークが後ろから
マイケルに、
断りの言葉を投げてきた。

「え、あ、ごめん。」

祭の様に賑わうギルドの中を、
マイケルが返事をする前に、
ルークは
足早に外へと出ていく。

「ほれ、ヤオも待ってるぞー」

タヌーが屋台のキッチンを指さし、
横で屋台賄いを頬張るヤオと、
マモの様子をマイケルに知らせると、
ナジールがマイケルの手を引いて
ルークの背中を雑踏に隠して
しまった。

「約束の相手が、いるだろうし、
仕方ない、か、、」

遠ざかる、
1つ括りの長いブラウンヘア。

マイケルは
名残惜しい気持ちで、
ルークの消えた後から
目を反らす。
そして家族同然のヤオの姿を
見て、
ナジールとヤオに駆け寄った


異世界に来て、
最初の居場所となった
『海辺のギルド』は
マイケルにとって徐々に古巣と
なっていく。

分解構造解析の能力を持つ、
目抜通りの商会長タヌーと、
魔道具制作のスペシャリスト
ナジール。

マイケルは目指す元世界への
回帰門、城に向けて
城下での地盤作りに駒を進めた。


ガラーーーーーンガラーーーーーンガラーーーーーン



めざせ転移門第2章 完。

★恋愛異令嬢は神隠しにあう!成り上がって↑成り上がって↑調整国ゲーム は第3章へ続く。



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