ロート・ブルーメ~赤花~
 ……。

 …………。


 綺麗に箸を持つ手が、メイン料理の煮魚を口に運ぶ。

 しょっぱくないかな?
 好みの味になってるかな?

 ドキドキと紅夜が咀嚼(そしゃく)するのを見ていた。


「……美味しいな」

 しみじみと言った様子で言われて、本心からの言葉だと分かる。

「良かったぁ」

 安堵したあたしは、そこでやっと自分のお皿に手を付けた。

 うん、美味しい。


 実は確実に美味しいと思ってもらえるようにいつもだったら目分量で入れている調味料もちゃんと測りながら作った。

 おかげでしょっぱ過ぎず薄過ぎずの丁度いい味付けに出来たと思う。


「明日は肉じゃがとかもいいな」

 食べ終わる頃にはそんなリクエストまで貰った。

「でもそれだとまた買い出しに行かなくちゃ」

「じゃあ昼のうちに行って来いよ。その間に俺も他の用事済ませておくし」


 そんな風に他愛ない会話をしながら後片付けを終える。

 お風呂には「一緒に入る?」なんて聞かれたけれど、慌てて「無理!」と拒否した。


「美桜の体はもう全部知ってるんだけど……?」

 なんて言われたけれど、恥ずかしいんだから仕方ない。

「じゃあそのうちな」

 って言って引いてくれたけれど、つまりいつかは一緒に入ろうってことだ。

 想像するだけでも恥ずかしくて紅夜の見ていないところで悶絶してしまった。
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