ロート・ブルーメ~赤花~
 二人ともお風呂から上がってコーヒーを飲みながらまったりする。

 このなんでもない時間が幸せだなぁって思う。


 もちろん求められて熱を交わしているときも幸せを感じるけれど、正直しみじみと思えるほどの余裕がないから。

 だから、こういうまったりしている時間は幸せを嚙みしめるのにちょうど良かった。


 でも、紅夜は熱を交わす方が良いのか触れてくる手がすぐにあやしい手つきになる。

 キスも深くなって、舌がからめとられた。


「んっ紅夜。待ってってば……」

「後でたっぷり貰うって言っただろ?」

 そしてまた唇を塞がれる。


 そのまま流されそうになるけれど、あたしは紅夜との何気ない時間も大切にしたい。

 それを知っておいてほしくて今は少し抵抗した。


「なんだよ、嫌なの?」

 ムッとした様子で言われて、「嫌じゃないよ」と否定する。

「でも、他愛ない話したりとか、一緒にDVD見たりとか……そういう時間もあたしは大事にしたいって思って」

「……」

 あたしの言葉に少し黙った紅夜は、はあぁ……と深く息を吐いてあやしい動きをしていた手を一度離した。


 怒っちゃった?

 と少し不安になったけれど、紅夜はあたしを腕の中に閉じ込めるように手を組む。
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