ロート・ブルーメ~赤花~

「まあ、正確には仮眠だけど……。俺がどこで寝ようが自由だろ?」

 彼は表情を変えずにそう言うと、少し眉を寄せて続ける。

「でも総長って言わないでくれるか? 俺はあくまで“管理者”なんだから」


 総長はいわば組織のトップ。

 管理者はトップの命令に従って諸々を取り仕切る人のことだ。


 確かに違うけれど……。


「そんなん知るかよ。トップが表立っていない状態じゃあお前がこの街の頂点だ」

 そう、下の方から見た場合はあまり変わらない。


「それで? その女を助けるために出てきたってとこか?」

 大柄な男はあたし達を顎で差し、警戒を強める。

「助けに?」

 金色の彼は予想外のことを言われたとでも言うように眉を上げ、少しだけあたしを見た。


「まあ、面白いものを見せてもらったから助けてやろうかな、とは思ったけど」

 すると男の方は不可解といった表情をする。


「面白い? その女、お前の女じゃないのか?」

「は? 違うよ? 何言ってんの?」

「っち!」


 何やら大柄の男は勘違いをしていたらしい。

 ……ちょっと待って。

 もしかしてあたし達勘違いで()められちゃったの!?

 勘違いで、あんなことに……っ!?
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