ロート・ブルーメ~赤花~

 圧し掛かられたときの恐怖を思い出し、思わず体が震えた。


「何? 俺の女だと思ってこの子ら襲ってたの? ……そう、俺に敵対したいってことでOK?」

 元々冷たい印象だったけれど、その声が低くなったことでさらに冷えることになる。


 単純に寒いからなのか、恐怖で震えているのか分からなくなった。


「っ! お前ら! いつまで痛がってんだ!? さっさと構えろ!」

 大柄な男は叫ぶと着ていたライダーズジャケットの中からナイフを取り出す。


 そこからの展開は、早くて良く分からない。

 ただ、あたしを押さえつけていた男が起き上がる前に気絶させられていて……。

 日葵を連れて行こうとした男がナイフを構えようとしたけれどその前に蹴り上げられていて……。


 最後に大柄な男は……構えていたナイフを足に落としていた。

「うっぐあ! っひぃい!」

 落としたナイフはしっかり足の甲に刺さっていたようで、男は情けない悲鳴を上げる。

 そこに黄金の彼の拳がみぞおちに入り、倒れてしまった。


 本当に、何が起こったんだろう。

 ナイフを持った人達。

 それも三対一だったのに、この金色の花のような人は無手で勝ってしまった。


 彼の動きは、綺麗で……単純にすごいと思った。
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