ネトゲ女子は社長の求愛を拒む
車に乗ると、やっと木村有里が口を開いた。

「あの、食事の約束ってしてました?」

「まさか。たまたま食事をしようと思って、入ったら有里さんがいたからね。挨拶をしようとしたら、不名誉なことを言われていたし」

「偶然とはいえ、助かりました。ありがとうございます」

偶然!?
は?そんなわけあるか!
普通なら、こう潤んだ目で助かりましたとか、あるだろ?
木村有里は顔色ひとつ変えなかった。
まさか、こんなアホな嘘を信じたのか?
あり得ないだろう。
表面上は笑顔を見せていたが、心の中は穏やかではなかった。
なんなんだ。この女は。
そう思いながら、自宅まで送り届けたのだった。
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