御曹司社長は双子の姉を溺愛したい!
「い、いいえ!大丈夫です!それは大丈夫です!」

焦って答えると、雅冬さんはまだ苛立った声のまま、言った。

「ふーん。でも、これでわかっただろ?」

「なにがですか?」

「お前が元彼と会ってた時の俺の気持ちだよ」

「まだ根に持っていたんですか!?」

どれだけ、心狭いの!?

「言っておくけど、俺はお前より独占欲は強いと思うぞ。俺から簡単に逃げれると思うなよ」

きっぱりと言い切ったのだった。
そうだった。

「わ、わかってます」

「そうか?わかってないから、今、俺の手を避けたんじゃないか」

「気のせい!気のせいですからっ」

「そうか。じゃあ、行くか」

車のキーを見せて、雅冬さんは微笑んだ。

「ど、どこに?」

「夕飯、食べに行く約束しただろ」

「そ、そうでした」

絶対、わざとだ!
そう思ったけど、これ以上、怒らせると面倒なことになりそうで、何も言えなかった。
そして―――私が連れてこられたのは山。
海の次は山ですか!?

老舗温泉旅館に雅冬さんはやってくると得意顔で言った。

「さあ、夕飯を食べようか?」

旅館の一番いい部屋を予約なしで泊まれるって……。
どんな夕飯よ……そう思わずにはいられなかった。

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