御曹司社長は双子の姉を溺愛したい!
不安を消して

菜々子(ななこ)は社長のこと、なんて呼んでいるんですか?宮ノ入(みやのいり)さん?雅冬(まさと)さん?」

凛々子(りりこ)はスーツの隙間から手を差し込み、胸に触れて言った。

「雅冬?」

一瞬、雅冬さんの険しい顔が緩んだ。
同じ顔、同じ声、動揺しない方がおかしい。
くすりと凛々子は笑いながら、耳元に唇をあて囁いた。

「雅冬、好きなの」

ぎし、と座っている雅冬さんの上から覆い被さり、凛々子は自分のブラウスのボタンをはずし、首に腕をからめたその時―――

「やめろ!」

雅冬さんはドンッと凛々子を突き飛ばした。

「あいつはこんな真似しない」

軽蔑するような目に凛々子は笑みを消して、目に涙を浮かべた。

「嫌でしたか?」

「菜々子なら―――よかったと思った」

正直すぎる感想に一瞬、凛々子の顔が素に戻っていた。
< 63 / 170 >

この作品をシェア

pagetop