御曹司社長は双子の姉を溺愛したい!
「いや、悪いのは俺だ。家から追い出されたんだろ」

黙って首を縦に振った。

「俺は絶対に別れないからな」 

そう言って、雅冬さんは手を力強く握りしめた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


部屋に着くと、すぐに雅冬さんはバスタオルを放り投げた。

「寒かっただろ。風呂に入っとけ」

「あ、ありがとうございます」

「着替えはあるか?」

「はい」

ちゃんとお風呂も沸かしてある。
お湯に浸かると、緊張が解けて涙がこぼれた。
バスルームの窓からは雅冬さんと出会ったベイエリアが見えた。
見慣れた黒い海とライトアップされた橋がいつもと変わらず、そこにあった。
何もかも、失ったわけじゃない。
バスタブのふちに額をつけ、涙を消した。
なんとか、平常心を保ち、バスルームから出ると難しい顔で雅冬さんがソファーに座っていた。

「お風呂ありがとうございました」

「ああ」

ホッとしているのは私だけじゃないみたいだった。
< 80 / 170 >

この作品をシェア

pagetop