最初のものがたり
放課後、いつも通り、
体育館脇で練習が始まるのを待った。

だけど、今日はなかなか出てこない。

どうしたのかな。

体育館の中をのぞこうと思ったその時に、
後ろから声をかけられた。

「何やってんだよ」

ヤバっ振り返らなくても分かる、この声!

やっぱり中2病の陰気野郎さん。

「何って、イメトレ?」

そう言う私に鼻で笑う。

この人に何回、鼻で笑われたんだろう。

というか、
この人以外に鼻で笑われた事なんてないんだけど!

「なんのつもりだよ。
鬱陶しいって言ったよな。俺につきまとうな!」

え。

つきまとうな!とは?

一瞬のうちに全てが分かった気がした。

この人、勘違い男でもあるんだ!

こじらせすぎじゃない?

「うんと、工藤くん、誤解だよ」

優しく傷つけないように言ってみた。

ツバサくんにも優しくって言われてたし。

でも、そんな気遣い全く不用だった。

「フン、そういう事言うタイプもいるな。
本気で鬱陶しい。
きゃあきゃあ騒ぐ方がまだいい、
アイツらは直接は来ないからな。
来てもフルボッコにできる。
木下みたいに興味ないフリして、
毎日バスケ部をのぞき見したり、
通学路の公園で偶然装ったり、
そういう奴が1番、気味が悪いんだよ!
それストーカだから。
犯罪だから。
頼むから俺に関わらないで、お願い。」

頭が怒りでいっぱいになった。

この人、かなり失礼じゃない?

私、好きな人いるし、お前なんか興味ない。

勘違いも甚だしい。

「あのさ、
どうして私があなたを、
ストーカーする必要があるのかな。
というか、前から思ってたんだけど、
あなたは何様なの?
誰かに常に狙われてるとか?
ああ、俺は特別な的な?
そういうの、中2病って言うんだよ。
私、初めて見たよ、中2病。
しかもコミュニケーション能力もないし、
日本語通じないし、ひどい勘違い男。
あ、でもこれも、
俺様を落とす技だろ、的な。
バカなの?
どういう育ちをしたらその考えになる訳?
きゃあきゃあ騒ぐって何?
ヤバイ奴にきゃあきゃあ悲鳴あげるって言うならそうだね。
それと、俺に話しかけんなって言ったよね、
なら、私にも関わらないで。
私は女子バスケ部の初心者練習に用があるの。
あなたと違ってバスケもできなけりゃ、
運動神経もないの。
シュートショーなんて練習しないと無理なの。
毎日毎日練習して手首ぼろぼろでも、
それでも1回も入らないんだよ。
工藤くんに付き合ってる暇はない。
どうか、私の事はほっといて。」

また怒っちゃった、私。

陰気野郎といると私、
イライラして声に出ちゃう。

人に怒り任せで怒鳴るタイプじゃないのに。

もう気分悪いし公園で練習しよう。

陰気野郎は、にらむように私の話を聞いていた。

どうせ通じないよね。

この人、国語力ないし。

「木下、お前、まさか…」

まだなんか文句あんの。

ていうか、お前って言うな!

またキレた私はキッとにらんで口を開いた。

「まさか、何?
俺の事、狙ってんの?とか。
おめでたいね。
私があなたをただのクラスメートとして、
認識してるって一瞬でも考えた事ない?
普通は考えるよね。
工藤くん、普通じゃないって。
ハッキリ言ってこじらせたヤバイ奴だって。
私、あなたの事嫌い!大嫌い。
もうほっといて欲しい。
あ、でもなんだっけ?
嫌いなフリして近づく的な。
ならいっそ、そう思ってて。
そして私を無視して下さい。さようなら」

2度と話しかけんなよ!
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