愛しの鳥籠〜独占欲は凶器篇〜
「行く」
「…へ?」
ランのまさかの応えに思わず変な声が出てしまった。
「え…、だって、ラン…」
「なに?」
…なんか、ランの周りに黒いオーラが見えるんだが。
「…全力で潰してやるわ。その愛梨沙って女」
普段の可愛い声音からは想像出来ないほどの地を這うようなそれで更にニヤリと口角が悪く吊り上がる。
…そんな、悪いランの表情を見ても普通に欲情してしまう僕はもう彼女から逃れられないだろう。
ミイラ取りがすっかりミイラになってしまっていた。
「ユキ。ユキが納得いく美容室とセレクトショップを探して」
「…それは構わない。けど、」
「勿論、ユキもその場に同席。でしょ?」
「当たり前。すぐに調べるね」
こんなに積極的なランを見るのは初めてだ。
僕の為に?いや、自分のプライドを守る為だけだとしても、嬉しかった。
ランがあのアホ共に、自分が僕の彼女なんだと。誰にもこの立場は譲らないと。
強い気持ちが今のランからヒシヒシと伝わってくる。
今までは全て受け身だった彼女が、僕の為に自ら動いてくれている。
その事実だけで、幸せを感じて狂いそうだ。
何とも言えない感情に浸りながらも、僕はスマホを手に取り早速僕の条件に合った店をピックアップし、足を運ぶ美容室もセレクトショップもあっという間に決めた。