社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 中に入っていたのは、写真と身辺調査の結果で、要人が私と出勤したり、私のアパートに入って行く姿を撮ったもの。

「これを宮ノ入(みやのいり)会長に見せたら、どう思うかしら? それとも社内にバラまいてあげましょうか?」

 いつもの見慣れた光景に、特別な感覚はなかった。
 でも、要人は違っていて、真剣に写真を選ぶ。
 そして、写真を一枚引き抜いて、私に言った。

「なあ、志茉。この写真よくないか?」
「え? どれ?」

 見ると、アパート前で要人が腰を抱き、寄り添う私たちの姿だった。
 
 ――今朝も撮られてたの!?

 私が違う意味で、ショックを受けているというのに、愛弓さんが気づいていない。

「ふふっ。倉地さん、驚いたでしょ? あなたのせいで、要人さんの出世がなくなるわよ。倉地さんは、これをどうするのかしら?」
「これは破棄します!」
「どうしてだよ! 永久保存版に決まってる。俺と志茉の関係性がばっちり綺麗に撮れている」
「どこがよっ! こんなイチャイチャ写真、冗談じゃないわ!」

 写真を奪おうとした私の手を避け、要人は負けじと守る。
 私と要人が写真一枚を取り合っている様子を見て、朝比さんが口を挟んだ。
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