社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 要人がつける痕が増えるほど、私の体の熱も増していく。
 激しさを隠した唇と指で、焦らし、徐々に追い詰める。
 肩から腕へ、腰に手をやり、脚に手が触れられ、その手に反応してしまう。
 私の快楽を引き出すために、そういう触れ方をしているのだろうか――ただ撫でられているだけなのに、もどかしさから、体の熱がくすぶり、甘く高い声が漏れそうになる。
 シーツを握り、堪えていると、不意打ちのようにして、耳へ熱い息がかかった。

「……っ!」
「声、出していいんだぞ?」

 耳元で囁く言葉と同時に、息がかかり、体の奥に潜む甘い疼きが強くなり、理性を奪っていく。

「志茉が望むなら、なんでも与えてやる」
「あ……」

 要人の低い声が頭の中まで届き、その腕にしがみついた。
 淡い刺激だけを与え、焦らし、耳たぶを甘く噛む。舌が耳の形をなぞり、声だけを上げさせた。
 私に見せつけるようにして、赤い印をつけた要人は悪い顔で笑った。

「か、なめ……」

 その美しい笑みにぞくりとして、感情が煽られる。
 私だけが乱され、要人はまだ冷静―――冷静なままに見えた。

「志茉。どうしてほしい?」

 余裕の表情が悔しい。
 でも、顔を見て、私は要人がなにを求めているのか気づいた。
 一度も私の唇に、要人からキスをしていない。

「……ずるい」
「ん? なにが?」

 恨めしい顔をした私に、要人は嬉しそうに笑う。
 どんな顔をしても要人は、私が要人を見ると、こうやって笑うのだ。
 私の視界に、自分だけがいることに喜んでいるのを私は知っている。

「志茉。もっと欲しいなら、ねだっていいんだぞ?」

 ――なんて、悪い顔。
 
 ねだっているのは、要人なのに、本当にずるい。
 至近距離で見る要人の瞳は、熱っぽく潤み、綺麗な顔に色気が滲む。
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