社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 その顔を崩したくて、要人の首に手を回し、わずかに乱れた呼吸にの上に、自分の唇を重ねて、キスをする。

「志……茉……」

 うっとりするような声の次にやってきたのは、激しいキス。
 要人は覆いかぶさり、私をシーツに押さえつけると、顎を掴み、何度も深くまでキスをする。

「まっ……て……く……るし……」

 制止の声すら消して、要人は私の口をこじ開け、舌を絡め、噛みつくような猛獣のキス。
 理性が消えてしまうのが怖くて、要人の腕を強く掴んで、顔を背けると、要人が追って口を塞ぐ。

「ふっ……あ……」
「志茉は強情だな」
「そんな……ことっ……あっ……」

 要人は一瞬だけ離した唇を再び、自分の唇で埋めた。
 残る理性をことごとく奪ってしまうつもりでいる。

「んぅ……」

 すでに体は熱を帯び、弱く抵抗する私にキスの雨を降らせる。
 快楽の波に溺れかけた私の顎を掴み、喘ぐ口を塞ぎ、まだ足りないというように、私を食らう。
 これは、数年分の想いが積もった分のキス。繰り返されるキスで、再び、私の中で硬さを取り戻し、要人はぺろりと唇を舐めた。

「かっ……要人……ま、待って……まだ」

 体が痺れ、力が入らず、息を整える私に、要人は微笑んだ。
 汗で濡れた肌に、手を添え、首を横に振る。
 要人は動きを止め、耳元に言葉を残す。

「志茉だけを愛してる」

 ――それは、愛の告白より重い。
 
 私だけがすべてだと言われたような気がした。

「だから、俺から離れられないようにしないとな」

 もう、何度も絶頂を迎え、動けないのに、なおも要人は私に快楽を与え、体を支配する。
 
「かな……め……、要人……」

 言葉にならず、名前しか呼べなくなるまで抱き尽くされて、最後は意識が途切れた。
 要人の愛は、重くて深くて――二人の境を消してしまうほどの熱。
 ずっと潜めていた熱で、私を溶かし、誰よりも近い存在になったのだった。
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