社長はお隣の幼馴染を溺愛している
「でも、志茉の気持ちもわかるわ。この年齢から付き合う相手は、どうしても結婚を意識しちゃうから。高校時代とは違うわよね」

 恵衣は隣で日替わり定食を食べたら、冷静になったらしく、要人の家柄や立場を思い出したようだ。
 私たちも二十四歳になって、今年で二十五歳。要人は二十八歳になる。
 純粋に恋愛を楽しんでいた頃と違って、いろいろ意識してしまう。
 友よ、わかってくれたようねと、言おうとした瞬間、社食がざわついた。

「仁礼木社長よ!」
「どうして、この社食に?」
「役員達が食べる上階の社食じゃないの!?」
「隣にいるの、常務よ。案内されているみたい」

 要人よりずっと年上の常務は、ハンカチで汗をぬぐいながら、社食の案内をしていた。
 いつもなら、上の階の役員専用の社食でゆったりランチをしているのに、今日はそうもいかないらしい。
 なにか難しい話でもしているのか、要人はにこりともせず、社食内のあれこれを指示している。
 要人が私を見つけると、口の端を上げて微笑んだ。
 こちらが怖い顔をして睨むと、私との約束を思い出したのか、要人は慌てて目を逸らした。
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