社長はお隣の幼馴染を溺愛している
「まあ……多少は」

 ――あるというか、なんというか。
 その社長はお隣の家に住んでいますとは言えず、肉を口の中に放り込んで誤魔化した。

「あーあ。倉知さんもか。俺たち、今日ほど寂しい思いをした日はないよ」
「えー! 私たちは湯瀬さんたちに、冷たくしてないです!」
「そうですよ!」

 受付の女子社員は一様に、キラキラしていて華やかで可愛い。
 そして、受付のメンバーと飲み会に行くのも気楽でいい。
 自分がそれほど喋らなくても、場がいつの間にか進行しているから。
 話題も豊富で、情報通ときたら、営業の人たちも彼女たちと飲んでいて楽しいはずだ。

「ま、あのレベルの男じゃ、俺たちも納得するしかないよな」
「親族で固められた宮ノ入グループが、子会社とはいえ、血の繋がりがない人間に、初めて社長を任すんだから、相当のやり手だと思うぞ」
「あれはモテるだろーなー」

 同性からみても、要人は有能で、女性にモテモテ男に見えるらしい。

「まだ初日なのに、人気がすごいですよね。今日、仁礼木(にれき)社長が帰る時間を見計らって、女子が出待ちしてましたよ」
「出待ち!? アイドルかなにかなの?」
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