世話好き女子がクーデレ男子を愛育した結果



「あかり、かわい」
「あーちゃん!! なんだいその良い男!!」
「へっ」
「は?」
「うわー、身長も高いし良い顔してるねー! よし、もう一つおまけのキャベツ貰ってきな!」



 八百屋のおばちゃんが総一郎の顔面に惹かれ、パンパンの袋に更にキャベツを詰め込む。


 そして八百屋を出ても肉屋に魚屋、色んな店で呼び止められ、総一郎の顔面に度肝を抜かれた女性陣が赤い顔でどんどん総一郎にオマケを渡す。



「あかりちゃん! 彼氏?! カッコいいね〜〜!はいこれ持っていきな!」
「ああ、はい」
「ちょっ」
「あらー! いい顔してるわ! これあげる!」
「はい」
「待っ」
「これも持ってって〜! はぁ眼福だわ〜!」
「ああ、どうも」
「もういらないです! ありがとうございます!」



 やっとあかりが商店街の人々と総一郎の間に入り、おまけラッシュが終わった。最終的に買ってもない店からもオマケを貰っていて謎だ。


 そして、目的地の米屋では、割引とサービスでお餅まで貰ってしまった。


 総一郎は「ああ」とか「ハイ」とか一言二言返事を返すだけで、終始表情を崩さず動じもしない。


 与えられるものを拒まず貰うことに慣れていたからこそ成せる技だ。


 最終的に、総一郎の両手には袋が合計4つ、ポケットには沢山の飴玉。あかりの自転車のカゴにお米10キロ。


 こんなはずでは……。あかりは少しだけしょんぼりした。



「総一郎くん、ごめんね」



 しょんぼりげっそりするあかりを見て、総一郎は口を開く。




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