離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「いや~妻に手を出しそうだから、夜は家に帰れないって、残業三昧だったのにな。それだけ大切にしていたにも関わらず、今度は離婚話だなんて、どんな夫婦なんだ?」

「射水、クビにするぞ」

 俺の苦労を知っていてなおからかってくるとはいい度胸だ。

「お~怖い。いい大人がなにやってるんだか」

 そう言われても仕方ない。和歌のことについての俺の対応はひどいものだ。この間のキスも彼女はすごく驚いていたようだ。ただ嫌がっていたわけではない。

だから余計にここからどうするのがいいのかわからない。離婚を切り出された後、色々と調べてみた。

 彼女に他に好きな人ができたとか、そういうことではないのは確認した。俺を嫌っているようなこともない。そうなれば白木さんが……とも思ったが、ふたりの結婚を一番喜んでいたのだからその可能性も薄い。

「まあ、そう悩むな。俺がそばにいてやるからな」

「やめろ、気持ち悪い」

「うれしいくせに、じゃあな」

 射水が部屋を出ていった。もともと結婚自体に興味がない射水は、俺の結婚がうまくいけば自分の結婚も考えると言っている。人の人生に自分の選択をかけるなんて馬鹿げている。

 いや、射水のことはどうでもいい。とりあえず和歌だ。この間〝恋人〟になることには成功した。そこから間違った順番で進んだふたりの仲を、どうにか修正しなくてはいけない。

 目の前の仕事に集中できなくなってきた。今日はもうこのくらいにして切り上げることにして俺は家路についた。

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