離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「ほー、自分が彼女の弱みに付け込んで結婚した自覚があるんだな」

 射水の言う通りだ。それが俺にとっての負い目だった。

 白木さんは俺に彼女との縁談話を持ちかける何年か前から、俺に彼女のことを話して聞かせていた。それとなく勧められていることはわかっていたけれど十歳も年下。

 しかも当時はまだ大学に入ったばかりの彼女のことは正直、結婚相手としてはみられなかった。

 やんわりとかわしていたがついに本格的な見合いの打診があった。俺は、はっきり断ろうと白木邸を訪れていた。

 ◇ ◇ ◇

「あら、小田嶋さん。今ちょっと、別のお客さまが――」

 家政婦さんと話をしている最中に言い争う声が聞こえた。

「おい、もう一度言ってみろ」

「だから、馬鹿はいつも同じ手だと言っている」

 中庭の向こうにある縁側。そこにいるのは白木さんと『四葉(よつば)銀行』の頭取、石橋(いしばし)氏だ。経済界のドンと言われるふたりはたしか囲碁仲間。今も囲碁盤を挟んで座っているが、かなり険悪なムードだ。

「だいたい兜町の風雲児なんて言われて調子に乗るな」

「なにを? たかが金貸しのくせに」

 どうやらふたりとも囲碁で白熱したのちに、お互い罵り合いを始めてしまったようだ。しかしいい歳したじいさんたちがなにをやっているんだか。いや、いい歳している分誰も止めることができずに、家政婦たちがおろおろしている。

 どちらも力のある人間だ。例えれば虎と竜の喧嘩。とばっちりだけでも相当な大けがになるだろう。
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