離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「ははは。お前のそんな顔見られるなんて、すげー」
急に笑い出した射水の足を、カウンターの下で遠慮せずに蹴り上げた。
「痛てぇ!」
「人の不幸を笑った罰だ」
「それは……ふはっ、悪かったな……ぷっ」
まだ笑いが収まらない射水を睨んだが、まったく効果などなかった。
「あ~怖い怖い。そんなだから和歌ちゃんに振られたんだ」
「和歌ちゃんなんて気やすく呼ぶな」
今はどんな小さなことにもイライラしてしまう。俺はこんな器の小さな男だっただろうか。
いや、わかっている。これが他でもない和歌のことだからだ。いつもそうだ。和歌のことになると、いつもの俺でいられなくなる。だから今、こんな結果になってしまっているのだろう。
「情けない」
射水に八つ当たりしていることも、和歌が離婚を考えるほど悩んでいることに気が付かないことも、すべてが不甲斐なく思う。
はぁと大きなため息をついていると、射水が俺の肩を叩いた。
「そんな落ち込むなって。お前がひと目ぼれなんてめずらしいと思ってたら……あははは」
自分で言うのもあれだが、物心ついた時からモテた。女性関係で不自由したことないなんて口にはしなかったが、実際にそうだった。
思い通りにいかなかったのは和歌だけだ。大切にしてきたつもりだったのに。
「そもそもなんで奥さんにわざわざ告白めいたことをしなきゃいけなかったんだ? 押し倒せば済む話だろ?」
射水のデリカシーのない言葉に怒りを覚える。
「和歌は男性経験がほとんどない。それなのに俺のような年の離れたやつと体の悪い祖父のために結婚した優しい子なんだ」