Tear Flowers〜奪われた未来〜
部屋に泣き声が響き、誰もがシオンの死を嘆く。フィオナの胸がギュッと痛くなっていった。あの時、撃たれたのがシオンではなく私だったらと、守れなかった、救えなかった、その後悔が込み上げる。

もう二度と、家族のように奪われたくなかった。でも、その願いが叶うことはなかった。目の前がぼやけていく。

「フィオナ……」

エヴァンが声をかけたことで、全員の驚いた顔が見える。フィオナは泣いていた。悲しいと思っていた。ずっと心になかった感情は、最悪の形で戻ってきたのだ。

「ごめんなさい」

フィオナは呟き、シオンに触れる。もうこの瞳が開くことはない。もう二度と話せない。数時間後には、彼女は冷たい棺の中に入れられる。そう思うと、悲しくて胸が苦しく、涙があふれて止まない。でも、こんな自分が泣く資格はないと必死に唇を噛み締める。

その時、フィオナの体が温もりに包まれていた。フリージアに抱き締められているのだ。フリージアは言葉を震わせながら、フィオナに言う。

「泣きたい時は泣けばいい。俺だって、堪え切れないんだ。今は泣け。誰もお前を責めたりしなんかしない。泣かないと心が潰れちまう」

フリージアの言葉に心は動かされ、フィオナは小さな子どものように声を上げて泣いた。もう、涙は止まらない。

最悪な形で、この事件は幕を閉じた。
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