シングルマザー・イン・NYC
慧は父親のことをずっと知らずに人生を歩むのか――私が篠田さんに会わないことと、慧を篠田さんに会わせないことを、同じに考えていいのだろうか。
大きくなったこの子は、母親が父親について隠すことを、どう思うんだろう。
「希和、あのさあ。慧のこと、やっぱり篠田さんに教えた方が良くないか?」
私の不安を察知したのか、アレックスは慧を床に下ろした。
「……」
私が黙ってソファに座ると、アレックスはコーヒーカップを手に、隣に腰を下ろした。
「私が一人で決めて産んだ子だよ、篠田さんには関係――」
「あるだろ。父親なんだから。別に結婚しろっていうんじゃなくてさ、自分にこんなにかわいい息子がいるんだってことは、知っておいた方がいいんじゃないかと」
「……まだそういう気持ちになれない。それに篠田さんは西宮さんと――」
結婚しているのではないか。
だとしたら、嫌がらせみたいになってしまう。