シングルマザー・イン・NYC

「まあ、希和の気持ちもわかるよ。ごめん、余計なことを」

「ううん、そんなことない。また何かあったら言って」

「わかった。俺はさ、希和と慧が心配なんだ。希和はしっかりしてるから大丈夫だとは思うんだけど、俺がいつまでも一緒に住めるわけじゃないし」

「――まさか、結婚?」

ニューヨークでは同性婚が認められているので、ゲイのアレックスも結婚可能だ。
そして、アレックスにはジェイドという恋人がいる。

「ジェイド、帰ってくるの?」

でもジェイドは一年前から海外赴任中(外交官だから)で、それが、ウェストサイドからイーストサイドに引っ越した後も、アレックスと私が一緒に暮らしている理由の一つだ。

「うん、来年。まだ一年近くあるけど、帰ってきたら結婚しようって、この間プロポーズ……」

私は思わず、アレックスに抱きついた。

「おめでとう!」

「……ありがとう。まだ先だけどね。結婚式には招待するから、来て」

「もちろん」

嬉しいな、と素直に思った。

数年間一緒に暮らすうちに、私にとってアレックスは、友人を越えて家族のような存在になった。

法制度が整っているとはいえ、同性婚というゴールに到達するとは。

お見事、アレックス。

やったね!
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