シングルマザー・イン・NYC
やがて結婚式の時間になり、夕日が、みんなの前に立つアレックスとジェイドを照らす。
みんなが見守る中、二人は誓いのキスをした。
帰りの車中。
リムジンのチャイルドシートに座る慧が、私の方に腕を伸ばした。
「何? 慧?」
小さな両手をそっと握って額にキスしてあげる。
「……あのねえ」
「うん?」
「アレックス、僕のパパじゃなかったね……?」
慧が不思議そうな顔で私を見つめている。
そうか、アレックスのことを父親だと思っていたのか。
向かいの座席に並んでいるカミーユさんとデイビットさんが、少し困惑気味の微笑を見せた。
「ママ。僕のパパ、どこ?」
どう答えれば良いのだろう。
こんなに早くこの質問をされるとは思ってもみなかった。
まだ二歳だけど、子供なりに色々なことを感じ取るのかもしれない。
何とも言えない雰囲気が後部座席に満ちる。
「――パパは――」