シングルマザー・イン・NYC
篠田さんは慧が自分の息子だと知っているのかいないのか……知っているとしたら、なぜ連絡してこないのだろう……知らなかったとしたら、突然現れた息子の存在をどう感じるのだろう……ああ、頭の中がごちゃごちゃだ。

私は空を見上げた。

秋晴れに、黄色く色づいた街路樹の紅葉が映える。
空気はきりりと冷たい。

急ぎ足で通りを左に曲がると、いたいた、少し先に十匹の犬を連れたヘンリーの後姿が見える。

「ヘンリー!」

慧の声にヘンリーが振り向く。
アジア系の彼は、両親がベトナムからの移民だそうだ。

犬たち――大きな黒いグレーのプードル、ジャーマンシェパード、ラブラドルレトリバー二匹、フレンチブルドッグ、ダックスフンド二匹、ビーグル、ハスキー、柴犬――も一斉にこちらを向いた。

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