シングルマザー・イン・NYC
気持ち良かったな――熱いシャワーのおかげで、エコノミーの狭い座席で凝り固まった体がほぐれた。

丸一日以上眠っていないけれど、気持ちが高揚しているからか、まだ眠くはならない。

バスルームを出て、リビングのドアをそっと開ける。ソファベッドに近づくと、慧は毛布にくるまって、すやすやと寝息を立てていた。傍らにはブラちゃん。移動中もずっと一緒だったのだ。

部屋は暗いが、カーテンは開けてあって、ライトアップされた東京タワーがきれいに見える。

キッチンに行くと、樹さんは食器棚から深皿を二枚取り出したところだった。

「雑炊でいい? レトルトだけど。しっかりしたものが食べたければ、何かとろうか――寿司とか?」

「雑炊がいいな」

「どれにする?」

 樹さんの隣に立ち、調理台に置いてある箱をのぞく――鯛、フグ、牡蠣、松茸、鶏肉、卵――。それぞれが上品な絵柄のパックに入っている。「レトルト」とはいっても、かなり高級そうだ。

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