シングルマザー・イン・NYC
いつの間にか手配してあったハイヤーで、私たちは樹さんの実家に向かった。
 
緊張する。

ニューヨークでの事故の後、樹さんが入院中に、私たちは過去のことを話し合った。
別れた時、そしてその後。
お互いに何を考え、どう感じていたのか。

樹さんはあまり詳しく語らなかったが、かつての婚約者である西宮葵が私の所に来たのは、彼女の意志はもちろん、お義母様の後押しもあったそうだ。

このお嬢さんなら――お義母様がそう見定めていたのが、西宮葵だったのだ。

だが樹さんは私と婚約し、別れた後もずっと私のことを思い続けてくれ――お義母様の思い通りにはならなかった。

「どこまで話したの?」

「何が?」

「私たちのこと。入籍したって伝えた?」

「もちろん、伝えてないよ」

「えっ……」

私は絶句したが、総理は笑った。

「いいと思うぞ、それで。光子さんのことだ、先に伝えると身構えてややこしくなるからな。驚かせるくらいでちょうどいいだろう。事故の件も、詳細は話していないんだろう?」

「もちろんです。希和と慧のことは伏せてあります」
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