シングルマザー・イン・NYC

挙式の日

六月。

鏡の中には、白無垢姿の私がいる。
自分じゃないみたいだ。

「お母さん、準備できたー?」

慧の声。

「うん、今行く」

係の人がドアを開けてくれると、慧を一番前に、ちょっとした人だかりができていた。

樹さん、母、義母様、アレックス、ジェイド、カミーユさん、デイビッドさん、ナニーのマリアと夫のホセさん、里香ちゃん、三上総理夫妻、小沢さん。

「お母さん、きれいー」

「素晴らしいわ!」

「美しい」

「感動した」

「キワ……!」

慧に続き、ローゼンタール夫妻のプライぺーとジェットで米国からやって来た大切な人たちが、にぎやかに褒めてくれる。

みんな、前のめりだ。

樹さんは少し後ろで遠慮がちに、彼らを笑顔で見守っている。
< 242 / 251 >

この作品をシェア

pagetop