シングルマザー・イン・NYC
「希和、ほんとに別れるんだ」

「……うん」

「アメリカ人の俺から見ても、篠田さんかっこよかったけどな。しかも弁護士で政治家一族の息子って、希和、玉の輿狙えたのに」

「――住む世界が違い過ぎるよ」

西宮葵のことだけでなく、これも気になったのだ。

身分違いの恋は、映画やドラマのようにはいかないと思う。

将来、篠田さんが私の至らなさに幻滅する可能性が大きいんじゃないか――西宮葵に会った時から、私はそんなことも考えるようになっていた。

潔癖症で臆病者。
自分が嫌になる。
そしてそんな私は、篠田さんにふさわしくはない。

ショックだったけど、きれいな別れ方をしたと思う。
何年かたったらきっと、ニューヨークでのきれいな思い出の一つになる。

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