シングルマザー・イン・NYC
「あら、キワ。もしかして赤ちゃん?」

カミーユさん――オペラで出会ったカミーユ・ローゼンタール夫人――は、あれ以来頻繁にお店にやってきては、私を指名してくれるようになっていた。

運転手付きの高級車で颯爽と乗り付け、その日に出席する会合や催しに合わせ、ヘアを整えていく。

シックだけれど高級感漂うジャケットスタイル、エレガントなワンピース、華やかなドレス――と装いは様々で、それをピンと伸びた背筋でカッコよく着こなす。

彼女が私の妊娠に気付いたのは、8か月に入った頃だった。
目立たなかったお腹も、さすがにどんどん大きくなり始めた。

「二か月ほどで出産です。少しお休みを頂くことになります。すみません」

「いいのよ、そんなこと。それよりおめでとう! お祝い、何がいいかしら。そうだ、ベイビーシャワー、させてもらえないかしら!?」

ベイビーシャワーというのは、妊娠八か月ごろに行われるパーティーだ。
主に女性同士で軽く食べ、会話やゲームをし、生まれてくる赤ちゃんへのギフトをもらう。
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