シングルマザー・イン・NYC
思わずむきになってしまった。

私の声に驚いたのだろう、慧が「ふにゃあ」と泣き出し、アレックスは

「おーよちよち、お母さんこわいでちゅねー。おこってままちゅねー」

と、腕の中で優しく慧を揺らした。

「――ごめんなさい」

「慧に免じて許す。俺は希和の味方だけど、でも、篠田さんはひどい裏切りをしたわけでなし、ちょっとのタイミングのずれっていう感じもあるだろ? 希和の両親のことはわかるけど、少し違う考え方をしてみてもいいと思うね」

「……」

私は答えられなかった。

アレックスの言うことも一理あるのかもしれない。

けれど、かたくなに篠田さんの謝罪を拒んだ上に何も知らせずに彼の子供を産んでしまって、その事実を知ったら、篠田さんはどう思うだろう。

きっと、怒るだろう。

慧を産んでからの私は、慧を愛しく思う反面、篠田さんに対してひどく後ろめたい気持ちを感じるようになっていた。
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