君の隣にいたかった。

聞こえなかった振りをして、私は病院へと足を動かした。


歩くのも辛い……足が重くって動かしずらい……頭も痛い。


胸がっ……苦しいっ……。


叶君を好きになってしまったことが、苦しいっ……。


たくさん思い出ができた。


お花見に行った時は叶君がジュースを零しちゃって、私にまでかかったこと。


お散歩に行ったら、たまたま気になる映画があって、叶君と見て見たら、緊張してドキドキした。


いつも優しい笑顔を向けてくれて、頭を撫でてくれた叶君を、好きになった。


ありがとう。私の幸せを作ってくれて。


楽しかった。


苦しかったあの日々なんて、すっかり忘れてた。


ありがとう。ありがとう。大好きだよ。






病院のベッドは、ふかふかだ。


窓から吹く柔らかい風が頬を撫でる。


天国に行ったら……空から叶君を見守ってちゃダメかな?



お医者様からのお話では、いつ心臓が止まってもおかしくないと。


ご飯も喉を通らないし、少しずつ痩せていく。



目を開けていることすらキツイし、なんなら、1人で呼吸することすら、
最近はままならない。



―――ガラッ


お医者様かな?


と思ったけど、違った。


っ……叶君っ!?



「なっ……どうしてっ……!?」



点滴が外れそうになるくらい力強く起き上がる。


嬉しさと焦りで複雑な気持ちだ。



「ははっ……見つけた!」



乾いた笑みを向けてくれるから、私の胸はキュゥンとなる。
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