セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】


「え、あ……分かりました。じゃなくて、分かったわ」

 思いもよらない颯真(そうま)の言葉に戸惑いながらも、それの方が夫婦らしいかと花那(かな)は納得し頷いた。
 しかし夫婦とはいえ何故か颯真とは気軽に話せる気がしない、目覚めてから一度も触れる事もなく花那はどこか他人のようにさえ感じていた。

「それじゃあ、ここが花那の部屋だから。ここは好きに使ってもらって構わない」

「そうなのね、ありがとう颯真さん」

 自分は書斎にいる、と颯真に言われ花那は案内された自分の部屋へと入る。ほかの部屋では何も感じなかったが、この部屋だけは少し懐かしさを感じた。
 クローゼットを開ければ、入院中に颯真が用意してくれたたくさんの服。別に外に出るわけでもないのにどうしてこんなに用意したのか。
 
「どうしてそれ以外の服が無いの? 私はここに住んでたのよね……?」

 普通に暮らしていればある程度の服は必要になる、それなのにこのクローゼットには以前の花那が着ていたであろう服が見当たらない。
 クローゼットを閉じて部屋を見て回る、シンプルなデスクとチェストが一つ。後はソファーとベッドだけだ。
 花那はテスクの引き出しを開け、今度はチェストの中を確認する。

「……ここにも何もない、いったいなぜ?」

 一気に不安が押し寄せてくる、本当に過去の自分はここで暮らしていたのかと。記憶のない自分に何が起こったのかと、花那は記憶がないことに心細さを感じていた。


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