セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「花那は何が見たいんだ? 人気のイルカのショー? それともペンギンやジンベエザメとか」
「そうね、それも可愛いけれど……」
花那の好きな海の生き物は昔からずっと同じ、丸いフォルムにで癒してくれる……
花那は園内マップをスタッフから受け取ると、開いて颯真に指差して見せる。
「アザラシ? ああ、だからあの時に君は……」
「私が、なに?」
花那がアザラシを好きだと分かると、颯真は何かに納得したように頷いて見せる。その理由が分からない花那は、颯真にそれを問い詰めるが……
「何でもない、ちょっとした疑問がやっと一つ解けたんだ。ありがとう」
それは颯真にとってもちょっとした事だったが、何となく花那にはまだ話せなかった。
初めての水族館のデートの最中に、一度だけ花那が颯真の服を掴んだ。それがアザラシの水槽の前だった、たったそれだけの事だったのだが。
「疑問が一つだけ? それにしては随分嬉しそうに見えるわ」
「……そうか?」
ハッキリわかるほど颯真に機嫌は良くなった、それがさっきの疑問とどう関係があるのか。花那は気になるがそれ以上問い詰める事はしない。
何となく自分が覚えていない内容で颯真が喜んでいる事に気付いてしまったから。
記憶が無くても颯真と五年暮らしたのは自分、この場所に一緒に来たのも花那のはずなのに。花那は何とも言えない複雑な想いを持て余しながら颯真の隣を歩いていた。