エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
(ありきたりか? 半日しか休みが取れなかったから遠出はできないしな……)

雅樹は普段、なにをするにつけても決断が早い方だ。

手術中は常に時間との闘い。

迷いは救命率を下げるので、私生活でも即断する癖がついていた。

それが、今日ばかりは迷ってばかりいる。

なんとしてもデートを成功させ、友里に笑顔で結婚を続けたいと言ってもらいたいからだ。

ポケットに入れている指輪ケースをいじりつつ、見るとはなしに空を眺めていたら、「お待たせしてすみません」と後ろに声がした。

振り向けば友里がリビングに入ってくる。

ラベンダー色のノースリーブのワンピースに、オフホワイトの半袖ジャケット。

無地であるから、生地の上質さや優れた縫製技術がよくわかる。

清楚で品のある友里によく似合う服装だ。

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