エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
長い黒髪はスッキリと涼しげに結い上げられ、真珠のネックレスとイヤリングが白い肌を飾っている。

これらは結婚して間もない頃、雅樹がプレゼントしたもので、身に着けてくれるのを嬉しく思った。

「よく似合っている」

友里に歩み寄った雅樹は、ほっそりとした腰に腕を回した。

照れくさそうに頬を染め、微笑む友里。

その控えめなはにかみが可愛くて、雅樹はたまらずキスをした。

「んっ……。雅樹さん、お出かけするのにお化粧が取れてしまいます」

文句を言いつつも友里はデートできるのが嬉しそうだ。

雅樹もつられて笑顔になる。

「悪い。君があまりにも可愛いから。さて出かけるか。時間がなくなる」

友里の背に手を添えて、リビングを出ようとしたその時――。

雅樹のジャケットの内ポケットでピリリと携帯電話が鳴った。

(まさか……)

嫌な予感は的中で、電話に出れば、病院からの呼び出しであった。

くも膜下出血の患者が間もなく搬送されてくる。

他の医師は別の手術中で手が足りないので、執刀してほしいという要請だ。

雅樹は迷いなく了承の返事をする。

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