エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
体を密着させるのは久しぶりで、友里は胸の中が温められた。

(雅樹さんの香りと温もり。ホッとする……)

至近距離にある雅樹の目はとても優しい。

「友里、愛してるよ」

「私も愛してます……」

雅樹が嬉しげに目を細め、友里の額に口づける。

心が通じ合うのが、当たり前のように感じるほど、雅樹はいつも安心と幸せを与えてくれる。

友里は目を閉じ、再び夢の中へ落ちようとしている。

隣では雅樹も寝息を立て始め、同じ夢を見ているような気持ちがしていた。



木々の緑が日に日に濃さを増す春。

友里はいよいよ出産に臨む。

ここは自宅から車で三十分ほどの距離にある産院。

堂島記念病院には産科がないため、雅樹が色々と調べて選んだ。

特別室はまるで高級ホテルのような設えで、友里は寝心地のいいダブルサイズのベッドに横になっている。

帝王切開での出産となるため、手術室に呼ばれるまではここに待機だ。

双子のいるお腹は、歩くのもやっとなほどに大きく膨らんで、狭いと訴えているかのように中からポコポコと蹴られる。

病衣姿の友里は、お腹を撫でて、「もうすぐ会えるよ」と双子に話しかけた。

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