エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
そばには有給休暇を申請した雅樹が付き添っている。

椅子に座らず、うろうろと室内を歩き回り、落ち着かない様子。

「雅樹さん、座ってください。十時に迎えにくると言われていますから、まだ三十分ほど時間がありますよ。テレビでもつけますか?」

「テレビ……つけても、内容が少しも入ってこないだろうな。オペ前にこんなに緊張するのは初めてだ」

前髪を掻き上げた雅樹が、天井に向けてため息をついている。

緊張している夫を友里が笑った。

「雅樹さんが執刀するわけでも、手術されるわけでもないのに変ですよ」

「友里は怖くないのか?」

「ちっとも。楽しみでワクワクします。この子たちにやっと会えるんですもの」

妊婦検診では、4Dエコーで胎児の姿を見られると言われたが、見たい気持ちをグッと我慢した。

性別もまだ聞いていない。

なんとなくもったいない気がして、感動は出産の日まで取っておいたのだ。

だから今は手術への緊張より、浮き立つような弾む心持ちだ。

「早く会いたいな。でも、お腹の中にいてくれる時間があと少しというのは、少し寂しい気もしますね」

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