エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
ネットで育児について調べると、『背中スイッチ』という言葉がよく出てくる。

妊娠中はピンときていなかった友里と雅樹も、今は何度も首を縦に振りたいほどに実感していた。

抱っこしていればスヤスヤ寝続けてくれるのに、なぜベッドに寝かせるとすぐに起きてしまうのか……。

「起きてしまったか」「起きちゃった」という残念そうな声が重なり、ふたりは同時に吹き出す。

「雅樹さん、楽しいですね」

「ああ。日向と日葵。名付けの通り、我が家を明るく照らしてくれる子供たちだ」

双子が揃って泣くので、友里が日向を、雅樹が日葵を抱き上げた。

生後四週にも満たない双子はまだぼんやりとしか目が見えていないはず。

それなのに抱っこしてくれる両親の顔を見て、双子がにっこりと微笑んだ。

ほんの一瞬のことであったが、「笑った!」という喜びの声も重なる。

楽しげに肩を揺らす夫婦。

五月の柔らかな日差しが、家族を明るく照らしていた。




【終わり】
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