エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
「友里の言った症状、たしかに夏バテっぽいけど、妊娠の可能性は?」

「えっ……?」

「避妊してる? していないなら、検査薬で調べてみたらいいよ」

妊娠はまったく考えになかったので、友里は驚いていた。

雅樹とのこれまでの情事を振り返る。

(そういえば雅樹さんが避妊具を使っているのを見たことがない。生理も遅れている……)

腹部に手をやり、まさかという疑惑を強める。

(私のお腹に雅樹さんとの赤ちゃんが? どうしよう……)

離婚を迷っているというのに、子供ができたら、さらにどうしていいかわからなくなる。

けれども困る一方で、なぜかじんわりと喜びが膨らんだ。

(もし妊娠しているなら、産みたい……)

フラフラだった体に力が湧いてくる。

「調べてみる」

手早く着替え終え、元気にロッカーをしめた友里に、「急に顔色よくなったね」と真由美が笑った。



今日も脳外科のクラークは友里ひとりだ。

午前中は忙しさの中であっという間に時間が過ぎ、昼休憩を終えて友里は病棟に戻ってきた。

パソコンに向かう。

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