エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
午前中に処理できなかった処置伝票を入力しようと思ったのだが、置いてあったはずの机上には見当たらない。

「あれ……?」

慌ててあちこち探すも見つからず、間違えて捨ててしまったのかとごみ箱の中を覗いたら、華衣に声をかけられた。

「友里さん、どうかしたの?」

「処置伝票が……」

「ないの?」

華衣が後ろに振り向いて、ナースステーション内にいる看護師に大きな声で呼びかける。

「誰か、ここにあった処置伝票、知らない?」

「あの、華衣先生、自分で探しますので……!」

慌てて華衣を止めようとしたが、奥から看護師長が出てきてしまった。

五十代半ばの看護師長は、優しさも厳しさも貫禄もある女性。

反射的に背筋を伸ばした友里に、看護師長がため息をつく。

「友里さんは最近、そそっかしいわね。仕事なんだから気を引き締めてちょうだい」

お嬢様の道楽じゃない、という声が聞こえてきそうな呆れ顔。

友里は「申し訳ありません……」と頭を下げた。

(どうしてなの……?)

なぜか最近、よくミスをする。

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