【コミカライズ化!7月28日配信!】5時からヒロイン
だらしがない私でも、週末は掃除と洗濯にいそしんでいる。でも今は本当に何もやりたくない。
食べないと死んでしまうからスーパーの買い出しにはいったけど、封を開けて食べているのはポテトチップス。ビールをプシュッと開けて飲みたいけど、それは胃によくないので、お茶を飲んでいる。
食事代わりにポテトチップスを食べるなんて、令嬢はしないだろう。

「お手伝いさんがいるから出されたものを食べているんだろうな」

横に寝転がり、肘をついてテレビを見る。

「ふうん、いいなあ」

テレビでは朝からグルメやお出かけ情報、話題のスポットを紹介している。いつから私はそういうことに疎くなってしまったのだろう。まったく流行りについていけない。

「こういうデートでいいんだけど」

社長が連れて行ってくれる場所もラグジュアリーでいいんだけど、気兼ねなくデートをするなら街をぶらぶらしたり、話題のスポットに行くほうがいい。
しかし、全く連絡してこない社長は、どこで何をしているんだろう。
金曜の夜からずっと連絡がない。令嬢にかかりきりで、私のことは忘れているんだ、きっと。テレビのリモコンとスマホを交互に持ち替えて、私の手は忙しい。
スマホは全く鳴らず、30手前の寂しい女が露呈してしまっている。

「テレビが友達」

買い込んだお菓子も、どんどん口に入っていく。ぼろぼろとこぼれたお菓子は、手で払う。

「こんなボロは見せてないけど、きっと幻滅するわよね」

そう。気取っていたっていつかボロが出るし、見せないと生活は続けられない。キレイでキラキラした恋愛で終わりにしたければ、今が別れ時だ。

「でも、早すぎでしょ」

指を折って数えるセックスの回数。キラキラした恋の思い出にするには、少なすぎる。

「私の恋愛の基準は回数だったっけ?」

クルーザーデートやお買い物。時間を見つけては行った、レストランや帰り際の濃厚なキス。
鮮明に思い出せるほど私たちの付き合いは短くて浅い。

「あんなに愛をささやいてくれたのに、やりたければなんでも言うのか!! 島流しの刑にしてやる!」

社長代わりの抱き枕をキッチンへ向かって投げつける。いっそのこと、本当にどこかに行ってくれたらあきらめもつくのに。

「こうなったら目には目を歯には歯をだ!」

弥生とマコにラインをして合コンの要求をする。やられたらやり返す、倍返しだ!!

「見ておれ、五代真弥」

なんだか猛烈にやる気が出てきた。こんなとき自分の単純さがありがたい。部屋の窓を開けて洗濯と掃除を始める。
習慣になっている一週間の通勤コーデまでやってしまい、再度スーパーに買い出しに行く。今度はお菓子じゃなくて、胃にやさしいお豆腐の惣菜とおかゆ。自分を労わってあげないと、このさきくる嵐に太刀打ちできない。

「やってやろうじゃないの」

買ってきた惣菜を片っ端から食べて、ふて寝を決め込んだ。
< 105 / 147 >

この作品をシェア

pagetop