【コミカライズ化!7月28日配信!】5時からヒロイン
「もうすぐ着くぞ、痛むか?」
「大丈夫です」
行く病院は決まっていて、ファイブスターの子会社の病院なのだが、社員は優先的に診察してもらうことが出来て、健康診断も全てこの病院で行っている。
病院に行くまでに、銀杏並木があるのだが、秋が深まると黄色に色づきとても綺麗だ。レンガ造りの歩道があって、そこを通る度、社長とのデートを妄想したっけ。今はまだ緑の葉が多くて感傷に浸るほどじゃないけど、黄色になったころ一人で来てみよう。きっと落ち葉が慰めてくれるだろう。
病院の駐車場に車を止めて、社長が車いすを押した看護師さんを連れて来た。
「こちらに移ることは出来ますか?」
助手席にいた私に看護師さんが言った。通勤してきたのだから、これくらいは大丈夫と立ち上がろうとしたとき、またもや社長が私を抱っこした。尽くしてもらえるって、最高。
私を車いすに座らせると、自分のジャケットを脱いで私の膝に掛けてくれた。
「すみません」
痛々しい傷がある膝を、隠してくれたのかも。
看護師さんが車いすのブレーキを外して押してくれる。
「かなり腫れてますね」
サンダル履きで裸足なら、すぐに状態が分かる。時間が経つにつれ腫れは酷くなるばかり。社長に病院に連れてきてもらって正解だった。
「転んでしまって」
「捻挫は長引きますし、後遺症もわりと残るんですよ。気を付けないと」
「はい」
病院内に入ると、整形外科に通されて、レントゲンを撮った。
社長はさすがに診察まで着いてくることはなく、待合で待っていた。
レントゲン写真を見ながら医師が説明する。骨に異常はないが、やっぱり捻挫の度合いとしては重いらしい。よくよく考えてみれば8センチの高さがあるヒールから、足首がねじれたんだから当たり前だ。骨折しなかっただけでも良しとしなければいけない。湿布を一週間分貰って、ついでに膝小僧の消毒までしてもらった。先生はまるで子供の怪我を手当てしているお父さんの様だった。
処置室で膝には大きなガーゼをあてがわれ、足首は湿布と包帯を巻いて診察が終わった。しっかりと処置をしてもらうと、痛みも軽くなった。
「通院しなければならないか?」
診察室から出てくる私を、待っていた社長が言った。
「来週にもう一度診察に来るようにと言われました」
「暫くは安静だな」
「ただの捻挫です。移動業務は出来ませんが、それは秘書課でフォローしてくれると思います。本当に申し訳ございません」
「仕事はどうでもいい、身体が心配なだけだ」
「申し訳ござません」
もう謝るしかない。仕事で怪我をしたのならまだしも、酒を飲んで怪我なんて目も当てられない。今日も相変わらず予定がびっしり詰まっているのに、病院の付き添いで時間を取らせてしまった。自由がきかない身体で仕事をしても、社長の足手まといにしかならない。今日はこのまま帰った方がいいような気がする。
「社長、申し訳ございませんが、このまま帰宅したいと思いますがよろしいでしょうか? 業務に関しては部長にお願いして、秘書を割り振って頂きますので」
多分昨日までの私なら、捻挫ぐらいで仕事は休まなかっただろう。有休が取りたいと言い出すだけで緊張していたのに、今は早退をサラリと言えてしまうなんて、やっぱりやる気が失せてしまっているようだ。
それに私が秘書じゃなくても社長の仕事は滞らないし、会社も潰れない。私がいないとダメだと奢り高ぶるのは本当にダメだ。
「大丈夫です」
行く病院は決まっていて、ファイブスターの子会社の病院なのだが、社員は優先的に診察してもらうことが出来て、健康診断も全てこの病院で行っている。
病院に行くまでに、銀杏並木があるのだが、秋が深まると黄色に色づきとても綺麗だ。レンガ造りの歩道があって、そこを通る度、社長とのデートを妄想したっけ。今はまだ緑の葉が多くて感傷に浸るほどじゃないけど、黄色になったころ一人で来てみよう。きっと落ち葉が慰めてくれるだろう。
病院の駐車場に車を止めて、社長が車いすを押した看護師さんを連れて来た。
「こちらに移ることは出来ますか?」
助手席にいた私に看護師さんが言った。通勤してきたのだから、これくらいは大丈夫と立ち上がろうとしたとき、またもや社長が私を抱っこした。尽くしてもらえるって、最高。
私を車いすに座らせると、自分のジャケットを脱いで私の膝に掛けてくれた。
「すみません」
痛々しい傷がある膝を、隠してくれたのかも。
看護師さんが車いすのブレーキを外して押してくれる。
「かなり腫れてますね」
サンダル履きで裸足なら、すぐに状態が分かる。時間が経つにつれ腫れは酷くなるばかり。社長に病院に連れてきてもらって正解だった。
「転んでしまって」
「捻挫は長引きますし、後遺症もわりと残るんですよ。気を付けないと」
「はい」
病院内に入ると、整形外科に通されて、レントゲンを撮った。
社長はさすがに診察まで着いてくることはなく、待合で待っていた。
レントゲン写真を見ながら医師が説明する。骨に異常はないが、やっぱり捻挫の度合いとしては重いらしい。よくよく考えてみれば8センチの高さがあるヒールから、足首がねじれたんだから当たり前だ。骨折しなかっただけでも良しとしなければいけない。湿布を一週間分貰って、ついでに膝小僧の消毒までしてもらった。先生はまるで子供の怪我を手当てしているお父さんの様だった。
処置室で膝には大きなガーゼをあてがわれ、足首は湿布と包帯を巻いて診察が終わった。しっかりと処置をしてもらうと、痛みも軽くなった。
「通院しなければならないか?」
診察室から出てくる私を、待っていた社長が言った。
「来週にもう一度診察に来るようにと言われました」
「暫くは安静だな」
「ただの捻挫です。移動業務は出来ませんが、それは秘書課でフォローしてくれると思います。本当に申し訳ございません」
「仕事はどうでもいい、身体が心配なだけだ」
「申し訳ござません」
もう謝るしかない。仕事で怪我をしたのならまだしも、酒を飲んで怪我なんて目も当てられない。今日も相変わらず予定がびっしり詰まっているのに、病院の付き添いで時間を取らせてしまった。自由がきかない身体で仕事をしても、社長の足手まといにしかならない。今日はこのまま帰った方がいいような気がする。
「社長、申し訳ございませんが、このまま帰宅したいと思いますがよろしいでしょうか? 業務に関しては部長にお願いして、秘書を割り振って頂きますので」
多分昨日までの私なら、捻挫ぐらいで仕事は休まなかっただろう。有休が取りたいと言い出すだけで緊張していたのに、今は早退をサラリと言えてしまうなんて、やっぱりやる気が失せてしまっているようだ。
それに私が秘書じゃなくても社長の仕事は滞らないし、会社も潰れない。私がいないとダメだと奢り高ぶるのは本当にダメだ。