蒼月の約束
一瞬にして、その場が静かになる。

「どうかされました?」

お母さんが、口に合わないものでありました?と聞くとおばあちゃんは、ふと呟いた。

「明日は、蒼月(そうげつ)だね」

また始まった。

朱音と亜里沙は、無言で目を合わせる。
どうせ、不吉とか言うんでしょ。

「月が蒼くなる日は、不吉なことが起きる」

ほらきた…。

すぐさま亜里沙がスマホを取り出して、明日の月の動きを検索する。

どんなに調べても「月が蒼くなる」という予報は出ていない。

「おばあちゃん、明日は普通の三日月みたいだよ」


おばあちゃんは亜里沙の言葉を無視し、「不吉じゃ」と言ってその場を離れた。

「自分が不吉なのを、そろそろ気づいた方がいいよね」

亜里沙が大きな声で言うのを、朱音が止める。

「やめなさい」

「おばあちゃん、友達がいなくて寂しいのよ」

お母さんが、同情を買うような表情でおばあちゃんの部屋を見つめた。

「あれじゃあね」

呆れたように亜里沙が言い、朱音も同感せざるを得なかった。





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